バーチャルスライドのアノテーションを用いた病理所見の標準化研究
関 来未 / 亀田総合病院 臨床病理科 / seki.kurumi@kameda.jp
田中 伴典 / 神戸大学病院 病理部・病理診断科 / tanaka.t.tomonori@gmail.com
功刀 しのぶ / 日本医科大学附属病院 病理診断科 / s-hemmi@nms.ac.jp
齊藤 涼子 / 東北大学 大学院医学系研究科病理診断学 / saitoarlu@patholo2.med.tohoku.ac.jp
蛇澤 晶 / 総合病院 国保 旭中央病院 / a_hebis@hotmail.co.jp
奥寺 康司 / 横浜市立大学 医学部病態病理学 / kojixok@yokohama-cu.ac.jp
福岡 順也 / 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病理学 / junfkoka@gmail.com
病理診断は主観的な所見の判断に基づくことが多く、評価者間のばらつきを生むことがある。間質性肺炎はその代表例と言える。過敏性肺炎のガイドラインが2020年に改訂されたが、病理診断基準の1つに気道中心性線維化(ACF)が加えられた。診断を大きく左右する所見であるが、病理医間における判断一致度は不明瞭である。本研究では、バーチャルスライドとアノテーション機能を用いて、病理医によるACFの判定におけるばらつきについて検討した。
方法:過去に過敏性肺炎と診断された症例とコントロールとして特発性肺線維症と診断された症例の外科的肺生検標本XX例におけるバーチャルスライドを使用し、5人の病理医により、Objective Viewerを用いてACFと考える部位にアノテーションを行った。全アノテーションをオーバーレイし、その一致度について検討を行った。スライド画像をパッチ化し、アノテーションの有無により2値化されたデータに基づきクラスター解析を行った。
結果:診断者間に大きな認識の異なりが観察された。同様の判断基準をもつクラスターは形成されなかった。5名の病理医のACFスコアと病理診断の相関を検討したところ、2名のスコアにおいてACFが過敏性肺炎と正の相関を示した。
結論:バーチャルスライドのアノテーション機能を用いることで、標本上に複数病理医の票かをオーバーレイすることが可能となり、病理医間のACFの認識に違いがあることが描出された。診断者間にばらつきのある診断の標準化につながる方法として提唱したい。