ハイパースペクトルを用いた機械学習による乳癌の病理学的グレード分類とそのスペクトル特性について
神谷 健太郎 / 一般財団法人 未来科学研究所 / kentaro.kamiya@milk-med.com
中矢 大貴 / 一般財団法人 未来科学研究所 / daiki.nakaya@milk-med.com
加藤 貴美 / 防衛医科大学校 病態病理学 / kimikato3113@gmail.com
津田 均 / 防衛医科大学校 病態病理学 / htsuda@ndmc.ac.jp
ハイパースペクトルカメラ(HSC)は対象物から入射する電磁スペクトルを高い波長分解能で検出できる VNIR(可視および近赤外)センサーである。対象物の詳細な情報把握が可能であり、リモートセンシングや異常検知などの幅広い用途に使用されている。
本研究では HSCを生体分野に応用し、乳癌HE標本を北海道衛星株式会社製のHSC1702で撮影、細胞核スペクトルから病理学的グレード分類の機械学習による識別と、その識別要因となる特徴量の評価を行った。
本研究では乳癌症例60例(核Grade1を19例,核Grade2を21例,核Grade3を20例)の標本を使用した。また、ハイパースペクトルデータは400nmから900nmの反射強度を5nmごとに101バンド使用している。
結果として,全体の一致率76%,内,核グレード1においては感度97%、精度93%の識別率を得た。また機械学習の識別によって得られる特徴量重要と各Gradeの平均スペクトルの差分から識別に重要な波長帯は主にHE染色に関連する3領域に分割されている事が示唆された。その結果からバンド選択による次元削減による識別を実施し各グレード間におけるスペクトの関係性を得た。
本研究によりイパースペクトルカメラの医療分野における応用可能性が示唆された。
今回の知見をもとに今後データ数を増やす等による識別精度向上を進める。また本解析結果を病理診断側にフィードバックし、双方向性作用を繰返すことでよりよいモデル構築の完成に近づくことが期待される。