Z-stack スキャンによる細胞診スクリーニングと診断の検証研究
田中 圭 / 長崎大学病院病理診断科・病理部 / keitanaka@nagasaki-u.ac.jp
堀 隆 / 亀田総合病院 臨床病理科 / takashihori@hotmail.co.jp
里 翼 / 長崎みなとメディカルセンター / sato_tsubasa@ncho.jp
福岡 順也 / 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科病理学 / fukuokaj@nagasaki-u.ac.jp
(背景):デジタルパソロジーは今や、病理診断のみならず画像解析・AI解析にも必要不可欠な分野である。しかし細胞診へのWSI技術の応用は、組織診標本と比較して細胞診標本の性質によるファイルサイズの増加やZ-stack機能など技術的なハードルがあり一般的ではない。以前我々は、手動での動画撮影を行いデジタル化することで、デジタルサイトロジーがガラススライドでの診断に劣らないことを証明した*)。今回、Z-stack機能を搭載したデジタルスキャナーを使用して、子宮頸部細胞診標本におけるガラススライド診断とデジタル診断における診断精度を検討した。
(材料・方法):LBC法で作製した子宮頸部細胞診標本100例を3D histech社製スキャナーを用いWhole slide image(WSI)化した。二人の細胞検査士によってガラススライドとデジタルスライドの両方法をベセスダシステムで評価し、一人の病理医によってダブルチェックが行われた。診断のウォッシュアウト期間は1カ月に設定し、診断精度の評価はCohen’s kappa indexを用いた。
(結果):ガラススライドとデジタルスライド間の診断精度は、2つの独立したグループでκ=0.22および0.46と低い結果を示した。
(まとめ):ガラススライドとデジタルスライドでの診断精度は低い結果を示したが、他の同様の報告と比較しても驚くべきことではなく、Z-stack機能を有したデジタル画像のスクリーニングにはさらなる検討の余地があると考える。今後我々は、1)スライドガラスでのスクリーニング後に、Z-stackでスキャンしたデジタル画像でのダブルチェックが可能かどうか。2)細胞検査士によるデジタル画像スクリーニングの前に、一次スクリーニングを行うAIモデルの作成し診断精度を比較検討していく予定である。