和泉医療総合センターにおける病理診断デジタル化の流れについて
佐野寿郎 / 和泉市立総合医療センター / hisao.sano@tokushukai.jp
中村陽一 / 和泉市立総合医療センター / izumi-kensa@tokushukai.jp
太田善夫 / 和泉市立総合医療センター / yoshio.oota@tokushukai.jp
覚道健一 / 和泉市立総合医療センター / kakudo@thyroid.jp
尹漢勝 / 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病理学 / hanseungy@gmail.com
福岡順也 / 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病理学 / junfkoka@gmail.com
近年、デジタルパソロジーの登場によりWhole slide image(WSI)化された病理組織像を用いて病理診断を行い、日常診療やコンサルテーションなどへの活用が広がっている。当院でも2020年4月からデジタルパソロジーが導入され、利用を開始している。当院における約1年間でのデジタルパソロジー活用の進捗状況を報告する。
WSIスキャナーは浜松ホトニクスNZ-S210を導入し、NASへと自動保存する設定を行った。配線はインターネットへ接続可能な院外回線へと接続し、Objective Viewerにて画像を閲覧することで、複数端末からの閲覧を可能とした。現在、ガラス標本を用いた顕微鏡診断とWSIを用いたデジタル診断が同数程度で実施されている。
早朝から夕刻まで常時ネット会議システム(WebEX)に接続し、長崎大学および亀田総合病院との随時カンファレンス可能な体制をとった。WSI利用により、病理標本の参照が容易になり再発/転移症例や経時的生検の診断がよりスムーズに行えるようになってきた。臨床医による閲覧も、WSIによる対応へと移行し、業務の軽減につながった。院内キャンサーボードやMDDカンファレンスにて病理画像を提示することで、臨床医との円滑なコミュニケーションが形成でき、診断精度や治療方針の検討の向上につながった。
レジデントが診断した症例の多くは、毎日上記ネット会議システムを利用したカンファレンスに提出され、診断確定が行われており、高い教育効果が得られている。同システムを用いて、週に一度難解症例や稀少症例、皮膚病理におけるコンサルテーション症例などの検討が行われ、高い教育効果と診断精度向上に役立っている。
今後は100%デジタル化を目指し、ガラス標本利用にともなうタスクを軽減し、技師のワークフロー改善につなげたいと考えている。